花菖蒲の心を紐解く
初夏になると、池や沼などの水辺で、凛と咲く紫色の花を見かけることがあります。それが、古くから日本人に愛されてきた花菖蒲です。その美しさは、まるで水面に映る月の光を思わせるほど神秘的で、見る人の心を惹きつけます。5月の端午の節句には、菖蒲湯として用いられ、邪気を払い、無病息災を願う風習も伝わっています。花菖蒲の強い香りは、古来より厄除けの効果があると信じられてきたためです。その一方で、花菖蒲は近年、品種改良が進み、紫色だけでなく、黄色や白、ピンクなど、多彩な花の色が楽しめるようになりました。池一面に広がる色とりどりの花菖蒲は、まるで美しい錦絵のようです。凛とした姿と華やかな色彩は、私たちの心を和ませ、初夏のひとときを彩ってくれます。